ウェアリングオフやジスキネジアといった運動合併症に対しては、これまで内服薬の調整や、貼り薬の使用、
脳深部刺激療法(DBS)という外科的治療法などが治療の選択肢でしたが、2016年の9月から、「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG; デュオドーパ®)」という新しい治療法を本邦でも行うことが可能となりました。これは、図2のように、内視鏡を使用して胃ろうを造設し、空腸までチューブを挿入します。そのチューブに体外式のポンプをつなぎ、レボドパ・カルビドパ製剤を持続的に投与するデバイス補助療法の一つです。進行期では、運動合併症の治療のために少量のレボドパ製剤を何回にも分けて内服するという方法を選択せざるを得ないのですが、内服回数が多いのは大変ですし、それでもどうしても血中濃度の「山」と「谷」ができてしまいます。LCIGはポンプを用いて一定速度で薬を投与し続けるので、血中濃度の「山」と「谷」がなくなり、血中濃度を一定に保つことができるため、ウェアリングオフ症状を改善させ、ジスキネジアの発現をおさえることができます。
図2 レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG; デュオドーパ®)
また、ポンプの重さは約500g程度(ポンプ+薬剤+カセット)で、ウェストポーチで腰に巻いたり、ショルダーバックなど肩にかけたりして携帯できますし、お風呂に入るときにはポンプを取り外すこともできます。
当院では、低侵襲消化器外科学講座(福永哲教授)と連携して、2016年10月からこの治療法を取り入れております。海外ではすでに52か国で承認され、現在6,800人以上の方がこの治療を受けています。主な合併症には、胃ろうに伴う感染やチューブの挿入に伴うトラブル等があります。当院では、適応の判断を、神経内科医、精神科医、消化器外科医等、多職種の医師が連携して行っており、適応評価のためには1週間程度入院していただいて判断することにしています。
本治療を検討してみたいという方は、かかりつけの主治医にご相談の上、当科を受診してください。